踏切構造といえば線路のまくらぎ上にガードレールと木製の敷板を並べ、止め釘で固定した敷板踏切が主流で、特に道路交通述が多い重要な踏切には省力化効果に優れた述接軌道が普及していました。
この様な状況のなかで、JR東日本様から「何か安くて良い踏切を考えて」と言われたのがテーマの始まりでした。
踏切の特異性
踏切とは鉄道と道路が平面交差する部分であり、鉄道の荷重と道路の荷直が作用する軌道にとって特異な場所であり、両方に良好な走行路を提供する必要があります。
踏切部分は、軌道状態が悪化しても、道路の通行止め等の手続きが必要であり、保守計画作成に時間が掛かる等の問題を抱え、軌道保守の困難箇所となっておりました。
また、踏切事故防止の観点から良好な道路の路面を提供することが重要であるなどの背景もありました。
踏切の実態
最初に踏切構造の実態を把握するため、アンケート方式で各種踏切構造について調査しました。
その結果、踏切の構造として、土路盤スラブ軌道のように省力化効果の高い連接軌道、軌道上をアスファルトで舗装した舗装踏切、木材を敷き並べた敷板踏切、小型のコンクリートブロックを敷き並べたRCブロック踏切および廃棄プラスチックを再成型した廃プラ踏切等がありました。
これらの中で、連接軌道以外は木まくらぎの軌道であり、PCまくらぎ化された一般の軌道に比べ構造的に劣っていることが明らかとなりました。これらの踏切部分では浮きまくらぎと軌道の高低狂いが発生し易い特異箇所となっていました。しかしながら、最初に述べたように、軌道保守作業のためには鉄道の線路閉鎖と道路の通行止めが必要なため、作業時間の確保が難しく、軌道保守が困難な所となっていました。
コンセプトと基本構想
新型踏切構造の開発のコンセプトを『低コストで施工性を向上させた新型踏切』としました。このコンセプトは、踏切部分で軌道構造が極端に弱くなっている特異点を解消し、かつ、軌道保守時の作業性を向上させ、最終的に、低コストで経済性に優れた踏切構造を目標にしました。
踏切部分の軌道の特異点を解消する新型踏切構造の構想を次のように纏めました。
① PCまくらぎと弾性レール締結装置を使用し、軌道構造の強化を図ること。
② 自動車荷重を分散させ、まくらぎの荷重負担を軽減できる構造とすること。
③ PCまくらぎ上に弾性材を敷き、その上に高剛性の鉄筋コンクリート製のパネルを設置すること。
④ 作業性については、軌間の内外の各4個所でパネルをレールに固定し、撤去・復旧の作業時間を短縮すること。
⑤ パネルに内蔵したアングルがガードの機能を持つこと。
ここで、鉄筋コンクリート製のパネルの設計と構造解析は鉄道総研で実施しましたが、パネルの固定方法を連接軌道等の踏切の設計施工で豊富な経験がある日本軌道工業株式会社に共同開発となりました。

開発時の総研型踏切舗装版

ゴム貼型の総研型踏切舗装版
普及と改良
実用化を前に、日本軌道工業株式会社の副社長は、これは鉄道総研が開発したのだから『総研型』と呼ぼうと命名され、普及に活躍して頂きました。
当初は、比較的小さな踏切を対象としたため、自動車荷重は総重量14トンまでと制限付で採用されました。ある時、JR西日本金沢支社長より「総研型を使用したいが大型自動車が通行できるように改良できないか?」との質問がありました。これを機会に、舗装版を共同開発し、製造販売していた日本軌道工業株式会社に相談し、受託研究として自動車の総重量20トンまで対応できるようにPC鋼棒を採用し、性能を向上しました。
その後、道路交通法で自動車の総重量が25トンに改正された時も、舗装版の鉄筋量とコンクリート強度を増強し、受託研究として性能を評価しました。この時は、総研に入社して実習の際に、舗装版の構造解析を一緒に担当した経験がある構造力学研究室にも協力を頂き、限界状態設計法による性能照査を行いました。
現在では、降雪地域向けの「ゴム貼型踏切舗装版」や「ヒートパイプ式融雪用踏切舗装版」のように機能を追加した総研型踏切舗装版も普及しています。
これらの総研型踏切舗装版は、JRおよび私鉄各社様で多数採用されています。また、この舗装版は短時間で簡単に施工出来ることから、工事および作業用の軌陸車の進入路としても採用されています。

